AIと壁打ちしながら作ったミステリーです。
私好みのものが出来たと思うけど、他の人から見たらどうか、是非感想聞かせてください!
読書カード
月に一度、公民館の会議室で読書会が開かれる。
参加者は十人ほど。同じ本を読んできて感想を語り合うだけの小さな集まりだ。年齢も職業もばらばらで、共通点といえば読書が好きなことくらいだった。
私は二年前から参加している。
会の最後には、読書カードを書く決まりがあった。
名前は書かない。
感想でもいいし、印象に残った一文でもいい。人前ではうまく言えなかったことを書く人もいる。
回収されたカードは幹事が保管する。
匿名だからこそ、本音が出る。
それがこの会の面白さだった。
ある日の読書会が終わったあと、幹事が一枚の紙を掲げた。
「これ、どなたかのですか?」
コピー用紙だった。
誰も手を挙げない。
幹事は紙を裏返した。
そこには数か月前の読書カードが印刷されていた。
『主人公は最後まで誰にも理解されなかった』
見覚えのある文章だった。
「会議室のコピー機に置きっぱなしになっていたんです」
場がざわついた。
なぜ読書カードをコピーする必要があるのか。
結局、その日は持ち主が分からないまま終わった。
翌月。
読書会が始まる前に、幹事が立ち上がった。
「あのコピーの件ですが、持ち主が分かりました」
部屋の空気が変わる。
「コピー機の利用記録を確認したところ、この会の開催日と一致していました」
幹事はそこで言葉を切った。
誰も声を出さない。
数秒の沈黙のあと、部屋の隅で椅子が鳴った。
男が立ち上がっていた。
「私です」
静かな声だった。
言い逃れをする様子もない。
「私がコピーしていました」
幹事に促され、男は鞄を机の上に置いた。
そして、一冊の分厚いファイルを取り出した。
中身は読書カードのコピーだった。
何十枚もある。
幹事がページをめくる。
さらにある。
まためくる。
まだある。
「全部ですか?」
男はうなずいた。
「二百九十七枚あります」
誰も声を出さなかった。
三年間。
男は読書カードを一枚ずつコピーし、元のカードを保管箱に戻していたのだ。
だから誰も気づかなかった。
「どうして、こんなことを?」
幹事が尋ねる。
男は答えず、ファイルを開いた。
ところどころに赤い線が引かれている。
『孤独だったのだと思う』
『本当は助けてほしかったのではないか』
『居場所がなかった』
『誰かに見つけてほしかった』
別の本。
別の参加者。
別の日のカード。
それでも、線が引かれている箇所はどこか似ていた。
男は静かにページをめくった。
また孤独。
また理解されない苦しみ。
また誰かを求める言葉。
それが何十枚も続いていた。
「探していたんです」
男が言った。
誰も口を開かなかった。
「何をですか?」
男は少し考え、それから首を振った。
「本当は読書なんて、あまり興味ないんです」
部屋が静まり返る。
三年間、一度も欠席せずに通っていた男の言葉とは思えなかった。
「僕が探していたのは、本じゃない」
男はファイルを閉じた。
「僕と同じ人です」